宮崎県児湯郡の建築設計事務所「とやま建築デザイン室」

宮崎県児湯郡にて住宅設計に関わるご提案を行っています。

進化する耐震リフォーム

1959 views

先週末2日間で行われた「耐震リフォーム達人塾」。
県内外から建築分野に関わる大学教授の方々をはじめ、多くの建築業に携わる建築士の方々が集まり設計編と施工編とに分けて2日間の講習となりました。

木造住宅の耐震リフォームについては大きく分けて、現状の強さを調査する診断業務と、現状からどのように補強を行うかを計画する改修設計業務、そして実際改修を行う耐震補強工事(耐震リフォーム)という3つの流れがあり、現在それぞれに市町村の助成を受けて進めることが出来ます。

当デザイン室でも開業当時から実務で取り組んでいる業務のひとつですが、耐震診断は多く依頼を受けるものの、改修の設計や補強工事の話しとなると工事費用の面で住まい手の方の負担が発生することになり、なかなかリフォームへと向かわないことも多くあります。そのような中、耐震リフォームに向けた工法の技術改善や補強金物の開発が進み、現在コストを抑えながら耐震リフォームが行えるようになっています。おそらくこの内容について全ての方が耐震リフォームへ関心を持つことはないかと思いますが、耐震に関心がある方やこれからリフォームを行う方にとっては知っておくと役に立つ内容です。

  見直される耐震リフォームの技術

 

従来より耐震診断から耐震改修への流れは主に木造住宅耐震診断士の登録証を持つ建築士が行うこととなっており、当デザイン室でもこの登録証の登録を得て診断業務及び耐震補強業務を行っています。今回耐震リフォーム塾の中で実演公開されたものは床や天井を壊さずに補強する耐震リフォームの工法。

実は耐震リフォームにあたっては壁を補強する際に補強材を施すために天井や床の一部を一時的に解体や取り壊しを行う必要がありました。そのため多くの手間や費用、時間等が必要となり住まい手の方へ負担が伴うことがありました。そのような流れの中、補強で扱う接合金物や施工技術も改良され従来のように天井や床を壊さなくても補強リフォームが行えるようになり、今回その工法を実演で習得するため1/1の実物大の実験モデル棟で工法の実演が行われました。

今回実演されたのは床や天井を壊さずに取り付けられる金物補強の方法と構造用面材を使った場合の補強方法。ここでは床や天井を壊さずに取り付けられる金物補強の事例をお伝え致します。通常耐震リフォームを行う際は既存の壁を取り壊し面材や補強部材と共に柱上下に取り付ける補強金物を設置しながら壁全体の強度を高めていきます。(※写真は実演のため補強している様子が外部からも見やすいよう外壁なしの状態としています。通常リフォームの時は外壁がありこのように外部から見えることはありません )

上写真は先にお伝えした柱部分へ補強金物を取り付けている実演の写真です。このように柱部分に取り付ける補強金物は土台面と柱面の両面にビスを打ち込むタイプのもので、耐震リフォームだけでなく新築の住宅においてもよく使われる金物のひとつです。ただ耐震リフォームの際は先述した通り既存外壁が張っている状態で使うことから土台面や柱面への接合ビスを真っ直ぐに打ち込み難いこともあり、取り付けについては現場での施工精度に大きく左右されていまうことが難点のひとつです。このあたりが金物が同じものでも耐震リフォーム工事は新築工事より高い施工精度を求められる要因のひとつとなっています。

  天井・床解体なしで取り付けられる耐震補強金物


従来までの耐震リフォームでは求められる補強耐力に応じて金物が選ばれ高い耐力を求められる場合はホールダウン金物などが必要となり、その際は補強する壁面の解体のみでなく、壁上下の床や天井面も状況に応じて一部取り壊しを行う必要がありました。そこで開発されたものが床や壁を取り壊さなくても設置出来る補強金物。上写真がその金物ですが接合ビスの長さに対し金物自体の軸が長いことが特徴のひとつです。この金物であれば既存の床や天井を解体せずに設置することが出来るようになり今までの解体コストや手間も大きく省けることになります。今回こちらの補強金物の取り付け実演が行われましたので写真と動画で記録撮影を行いました。

まずセットとなっている補強金物を分解し既存の梁下端にボルト受け用の固定ボックスを専用ビスで取り付けます。(※天井解体はなしの設定です)ここから先の取り付けは下の動画でご覧ください。(※お使いのパソコン環境・ブラウザによっては表示が遅れる場合もございます。その際はご了承ください)

        天井・床解体なしで取り付ける補強金物の設置

上写真が取り付けが完了した状況です。床や天井を解体せずに設置しやすいように改良されているのが特徴で施工精度もこの金物であれば品質が確保しやすいと言えます。ちなみにこの金物は短期許容引張耐力15knあり告示にも対応しています。

注意点としてこの金物の許容引張耐力15knあることによりあちこちと多用すると一箇所あたりの耐力壁への負担が強くなるため、出来るだけ小さな耐力をまんべんなく配置させ力の集中を分散させるほうが一箇所あたりの金物への負担低減にもつながり耐震に対しても安全な方へ向かいます。

今回の耐震リフォーム達人塾では今までの耐震リフォームにあった「費用が高い」「手間がめんどくさい」「時間が多く掛かる」などの問題点を地道な取り組みで改良を重ね大きく改善されたものでした。これから住まい手の方も多くの選択の中から耐震方法を選ぶことができ、また施工側もこの技術を習得することにより省力化で施工を行うことが出来ることになります。当室でも耐震診断から耐震リフォームの実績がありご相談に応じえます。お気軽にご相談頂けますと幸いです。