宮崎県児湯郡の建築設計事務所「とやま建築デザイン室」

宮崎県児湯郡にて住宅設計に関わるご提案を行っています。

改正省エネ法 説明義務制度

5128 views
新しく始まる省エネ改正法の説明義務制度

令和3年4月以降(正式には4月1日以降)住宅を設計または建設する際に、建築士が建築主に対して省エネ基準の適合性について判定を確かめ、その適合性について書面を交付して説明を行うことです。

これまで住宅の計画また建設工事において省エネ性能の適合性について特別な法規制は設けられてはいませんでしたが、令和元年5月の法改正によりこれから住宅を建設する際には計画を行う建築士から省エネ性能についての適合性について説明を受けた上で進めていくことになります。

  説明を受ける省エネ基準は2つ

今回の改正法において建築士から説明される省エネ基準の内容は2本立て。1つ目は建物の断熱性能を表す外皮性能の評価。もう一つは家庭内で使われる一次エネルギー消費量の評価です。

外皮性能基準

外皮とは建物の内部と外部の境界面のことで壁や窓の他、床や天井(屋根)の部位を表します。言い換えると外部から住宅を包む皮の部分。省エネ評価ではこの外皮から逃げる熱貫流量の度合いの他、夏季時において取得される日射量の割合を基準値に照らし合わせ評価判定します。

一次エネルギー消費量基準

もうひとつは一次エネルギー消費量の基準。一次エネルギー消費は住宅内で使用される設備類(暖冷房・換気・給湯・照明)の消費量(kw)を一次エネルギー換算(Gj)に置き換えて、その総量(消費量)を基準値に照らし合わせ評価判定します。

  外皮(断熱性能)基準はエリア別で評価

外皮性能の評価については日本各地で気温や日射量に違いがあるため地域区分に応じた8つの区分(上図参照)から計画する住宅の地点の基準に沿って評価判定します。同じ県においても平野部と山間部とで区分が変わる場合もあるため、計画地がどの区分になるのかを確認する必要があります。数値が小さい程より高い断熱性能が求められます。

  一次エネルギー消費量基準の内容

一次エネルギー消費量については家庭内使われる設備機器のエネルギー量を計算し評価します。評価の対象になる設備は冷房、暖房、給湯、照明、換気の他、家電等のエネルギーの消費量。その他太陽光設備(太陽光発電・太陽熱利用等)を利用する場合はその発電量や削減量についても合わせ評価します。

  適合判定の評価方法は4つの中から選択

適合判定の評価方法は上記評価表により現在4つの評価方法があります。この中から評価ルートを選択し評価しますが、選択する評価ルートによって評価内容も違いがあります。評価ルートによっては評価に時間を要したり作業量に対し費用等が発生することも予測されますので、事前に説明を行う建築士へ評価内容の違いや評価説明に掛かる時間や費用面等の有無についても確認しておくのが良いでしょう。

  適合評価は2つの基準を満たすこと

省エネ基準適合の判定は上記で説明した2つの基準(外皮基準・一次エネルギー消費量基準)がその地域で求められる性能基準値を満たすかどうかで決まります。基準値以内であれば「適合」の判定となります。

また、省エネ適合性の判定を行った場合は建築士から書面(上画像)によって結果が説明されることになります。不適合の場合は省エネ性能を確保するための取るべき措置の内容について記載がされます。

  説明(適合評価)を希望しない選択肢もあり

上述までは建築士から適合判定の説明を受ける流れをお伝えしましたが、「説明を受けない」・「説明不要」という選択も出来ます。その際は建築士から省エネ意向の意思を尋ねられた際に意思表明をする必要があります。また、意思表明と合わせ書類を持って建築士へと意思表示を示す必要があります。意思表明の書類を受け取った建築士は書面を保存の上、設計計画・契約の手順を進める形となります。

  アンケートで見る省エネ意向への調査動向

今回改正の説明義務においては省エネ基準への説明であるため、建築士から何をどこまで聞いてどう判断すればよいかわからないこともあると思います。参考に上のグラフは住宅性能評価・表示協会が実施した3年以内に住宅の新築また購入を検討している方に向けて行った省エネ志向へのアンケート結果です。結果からは60%以上の方が省エネ住宅に向けて検討したい意向を持っていることが伺えます。

  説明を受ける際の注意点

今回の法改正により建築士から省エネ性能の適合性の説明を受ける際にはいくつかの注意点がございます。事前に注意点を知ることで説明時や説明後の計画も進めやすくなります。

 省エネ性能の適合性を判定するために時間や費用が必要な場合がある 

省エネ性能の適合性を判定するのには先述した通りいくつかの判定ルートにおいて評価します。その中には簡易に判定するルートもありますが、計画物件の内容沿った評価(標準計算ルート)の場合などは評価に一定の時間やそれに伴う手数料などが発生することもあります。

 判定ルートによっては適合であっても評価は曖昧になる場合がある 

評価方法は計算に頼らず係数や簡単な入力によって評価するものもありますが、それらの評価では計画物件の立地や建物形状などは個別に評価されないため、判定結果で適合の評価が出た場合でも評価内容については曖昧な判定となってしまう場合があります。

 適合したからといっても快適性が約束されるわけではない 

今回の省エネ性能の適合性への判定はあくまでも現省エネ基準(平成28年度基準)での評価のため、省エネによる快適性までが約束されるわけではありません。省エネ性能を確保してより快適性を高めたい場合はこの評価に加えて建築士と省エネ性能について具体的に計画を進めていく必要があります。

  まとめ

令和3年4月からスタートする建築士による省エネ基準適合性への説明内容についてお伝えしました。省エネ性能と一口に言っても省エネの認識やそれから得られる快適性、またエネルギー消費量など経済性に関わる内容は住まいのライフスタイルによっても違いがあります。どのような暮らしを望むかを含めご家族と話し合い、省エネ制度に理解のある建築士と話し合いながら進めて行くことをお勧めします。