宮崎県児湯郡の建築設計事務所「とやま建築デザイン室」

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4号特例 縮小へ

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2025年の適合義務化に向けて進む「建築物省エネ基準改正法」。その一方、同時期の改正に向けて木造の構造審査に係わる区分規定の見直しが進められています。その大きな見直し部分は「4号特例」の縮小に向けた動き。「4号特例」は木造で家や建物を建てる際に構造審査が免除とされる特例事項のひとつ。家や建物を建てる際に関わる「4号特例」縮小化へ動向。何がどう変わるのかをこの記事でお伝えします。

・「仕様規定」とは簡易な計算のみで行う構造仕様の確認のことで主に建築士が行う
・「許容応力度計算」とは構造専門家による高度で詳細な木造の構造計算のこと。
・  法改正以後は「4号特例」が縮小され平屋以上の住宅には「許容応力度計算」の審査が必要
・  平屋でも200㎡超えは「許容応力度計算」の審査が必要

  木造建築物の区分

現在建築基準法には住宅を含む木造の建築物にはその規模や大きさに応じて構造の安全性を確保させるために規模や大きさに応じて区分規定が定められています。

建築基準法 第6条
(1号)建築物 表別表第一(い)欄に掲げる特殊建築物でその用途の床面積が200㎡を超えるもの
(2号)建築物 木造建築物で高さ13m超え軒高さ9m超え階数3以上延床面積500㎡を超えるもの
(3号)建築物 木造以外の建築物で階数2以上延床面積が200㎡を超えるもの
(4号)建築物 木造建築物で高さ13m以下軒高さ9m以下階数2以下延床面積500㎡以下のもの

改正前である現在、木造は最高高さ13m超え、軒高さ9m超え、階数3階以上、延床面積500㎡超えの区分となる「2号建築物」と、それ以外(最高高さ13m以下、軒高さ9m以下、階数2階以下、延床面積500㎡以下)となる「4号建築物」の二つの区分があります。大企業や団体の大規模建築事例は別として、個人の方が専用住宅や店舗併用住宅などを木造で建てる場合は後者の「4号建築物」に該当します。

  4号特例とは

法律では最高高さ13m超え、軒高さ9m超え、階数3階以上、延床面積500㎡超えの区分となる「2号建築物」を木造で建てる場合、構造専門家による高度な「許容応力度計算」を行い構造の安全性能を証明し審査期間にその根拠となる計算書や図面等を提出し審査を受ける必要があります。

一方、それ以外の木造「4号建築物」においては審査時に高度な「許容応力度計算」を必要とはせず、建築士の簡易計算で構造計画の確認を行う「仕様規定」、いわゆる「4号特例」という審査規定が設けられています。言ってみてば、4号特例は建築士が設計したものであれば構造的なものについては信頼しますので審査は簡略化しますね、というもの勘違いしてはいけないのは、審査の簡略化であって、規定を守らないでいい、ということではないこと。ここは大事なポイントです。

  「仕様規定」とは

木造の仕様規定内容を伝える画像 項目をリスト化して表示

仕様規定は簡単な計算方法で行える構造仕様の確認が主な内容です。仕様規定で行う内容は壁の量とそのバランスと柱に取り付ける金物の仕様確認の他、8つの仕様ルールを満たすことで安全性能を確保させることです。ここまで記すと全てが安全に確保出来そうに思えますが、簡易な計算での範囲のため床の強度や部材断面の寸法、基礎の検討などは含まれていないため、建築士の判断に委ねられる規定と言えます。

  「許容応力度計算」とは

木造軸組工法住宅の許容応力度計算の本の画像

一方、許容応力度計算になると建物に係わる自重や応力を拾い出し部材に掛かる負荷や抵抗力を応力度を元に解析しその安全性を確かめる計算方法です。この内容になると全ての建築士が行えるというものではなく、構造力学また構造計算を取得した構造の専門家に依頼して行うことが必要となります。もちろん安全性は全て根拠を元に算定されるため経済性も担保されかつ安全性も確かなものなります。ただし「許容応力度計算」の算定には別途費用と時間が必要となります。以下2つの違いを表で示します。

木造軸組み工法の仕様規定と許容応力度計算の違い
構造検討項目 仕様規定 許容応力度計算
壁量計算
壁配置のバランス
柱の柱頭・柱脚の接合方法
基礎の仕様
屋根葺きの緊結
土台と基礎の緊結
柱の小径
横架材の欠込み
筋交いの仕様
火打ち材等の設置
部材の品質と耐久性の措置
耐力壁の許容せん断力の計算
地震力・風圧力に対する鉛直構面の検定
鉛直構面の柱頭柱脚接合部の許容引張力の検定
水平力に対する水平構面の許容せん断力の検定
横架材接合部の許容引張耐力の検定
土台の曲げとアンカーボルトの引張とせん断力の検討
鉛直荷重に対する横架材の曲げとたわみの断面検定
鉛直荷重に対する横架材のせん断に対する検定
柱の座屈と面外風圧力に対する検定
土台のめり込みの検定
屋根風圧に対する屋根部材の接合部の検定
大きな吹き抜けに接する耐風梁の面外風圧力に対する検定
梁上に載る耐力壁
屋根葺き材の検討
地盤の許容応力度の算定
軟弱地盤の判定と対応
基礎形式の選定
基礎の仕様規定の確認
接地圧とフーチングの検定
基礎梁の検定
検討に掛かる時間 短い 長い
検討に掛かる費用 低い 高い
安全強度や災害への安心感 低い 高い

  木造2階建ては「許容応力度計算」が必要に

現在の基準(法第6条) 改正後の新基準(法第6条)※2025年施行予定
1号建築物 特殊建築物で200㎡を超えるもの 1号建築物 特殊建築物で200㎡を超えるもの
2号建築物 木造建築物で高さ13m超え軒高さ9m超え階数3以上延床面積500㎡を超えるもの 2号建築物 木造建築物で高さ16m超え階数2以上延床面積200㎡を超えるもの
3号建築物 木造以外の建築物で階数2以上延床面積200㎡を超えるもの 3号建築物 木造建築物で高さ16m以下階数が平屋建てかつ延床面積200㎡以下(三号特例?)
4号建築物 木造建築物で高さ13m以下軒高さ9m以下階数2以下延床面積500㎡以下のもの(四号特例)

現在の基準の中で木造建築物は一定規模(最高高さ13m超え、軒高さ9m超え、階数3階以上、延床面積500㎡超え)からは構造専門家による「許容応力度計算」が必要となっています(上表2号建築物)。しかし2025年から改正の新基準では同じ部分が(最高高さ16mを超え、階数2階以上、延床面積200㎡以上)という表現に変わります。さらに、4号部分は新基準では項目が削除され、代わりに3号部分が(最高高さ16m以下、階数が平屋建て、かつ、延床面積200㎡以下)という内容に変わります。つまり、従来通り仕様規定で良いのは新基準の3号の「平屋建て延床面積200㎡以下の住宅」のみとなり、平屋建てでも200㎡を超えるもの、また、階数が2階建てとなる木造については「許容応力度計算」の審査が必要となってくるわけです。ただし、最高高さ制限は現行の13mから16mという表現に変わり軒高さについては表現が削除されることから、高さ方向については旧来よりデザインの自由度は広がる改正だと言えます。

許容応力度計算で建てられた2階建ての住宅写真 吹き抜けとスキップフロアの家

許容応力度計算を行い建てられた2階建ての木造住宅。段差のある土地に合わせスキップフロアを採用。許容応力度計算は住まいの安全と共にデザインの可能性を広げる役割を合わせ持ちます。

  安全な住まいづくりのために

ここまで法改正に向けた木造建築物の構造安全性に関わる審査規定のことをお伝えしました。ここ数年国内でも大きな地震の多発に加え異常気象による台風の大型化なども懸念され、木造を取り巻く環境も以前より更に安全性を確保ししっかりとしたものを作らなければと思う昨今、その安全性は根拠のあるものでしか証明出来ないものと実感しています。特例の改正が行われることにより住宅においても更に基準が厳格化されますが、木造建築物の良質なストック及び財産保護の観点では良い流れと考えます。当室でも以前より一定以上の規模の木造については許容応力度計算にて構造安全性能を確保させています。今後家づくりを予定される方にも是非、住まいの安全性能を確保させる家づくりを望みます。