先日、以前に改修計画を依頼して頂いた住まい手のお客様から相談を持ちかけられ洗面室の改修工事を行いました。工事と言っても脱衣室一部屋のみで住まわれながらでの改修のため工事期間は絞りに絞り3日間のみの工事。今回その改修の模様をお伝えします。
こちらが改修前の既存で使われていた鏡付きの洗面化粧台。途中に一度お客様自身で洗面台の改修を行われた経歴があり、配管接続の兼ね合いから台が床から10センチ程度持ち上げられた状態で設置され、そのため洗面台を利用するため用に足元に高さ調整用の足置きの台を置いて利用されていました。今回、90歳のお母様が車いすでの介護でも利用出来る洗面台が必要とのことになり、改修を行うことになりました。
画像:パナソニック 洗面カウンターより引用
今回この依頼を受けるにあたり、お客様からは「車いすで利用出来る上に造作的なものでおしゃれなものにしたい」とのご希望を受けていました。そこでデザイン室では住まい手さまの意向を元にデザインが優先する造作面での洗面台をあれこれと模索検討を重ねました。しかし、どうしても車いす利用が前提となる手前、機能面や使い易さの他、安全面などデザイン以外での潜在的な要求事項を成立することが出来ず、造作での検討はやむを得ず断念。。お客様にそのことを伝えご理解を頂いた上、いくつかのメーカー既製品を検討し、その中から住まい手さまが好まれた洗面カウンターを選ぶことになりました。
洗面カウンターの採用が決まり工事用に図面を作成。今回は一室のみの改修のため作成図面は数枚のみ。洗面台の図はメーカー仕様図を元にカラー表示図で給水排水の位置がわかりやすいように作成しました。
工事初日
ここから改修工事スタート。まずは既存の洗面カウンター撤去から。引き出しを外部へ運び出します。
今回の工事期間は3日間限定の工期。引き出しの取り外しが終わると待ち構えるように次の工程。既存の洗面台で使われていた配管内の残水を取り出し排水管へと処理します。
旧洗面カウンターの排水処理が終わるとすぐにカウンター台の取り外し。撤去が終わると入れ替わるように次の工程へ。今回車いす利用の洗面カウンターを採用するにあたり元の洗面台下部分が室内へ現れてくるため床面も合わせて改修。同時に既存床面には断熱材が施されてないため断熱改修も行います。
既存床下地まで解体すると床組みが現れました。床下面が土間仕様なので今回防湿フィルムは施しません。一方、既存根太が不揃いのため追加で根太を施し床面を補強しました。
床面に使う断熱材は防蟻対応の硬質ウレタンフォームの断熱材。大判の断熱材ですが断熱性能はもちろんのこと現場での加工性もよく防蟻対策も施された信頼のおける断熱材で採用してます。今回は既存根太を活かす改修のため根太間に敷き込みして床面の断熱は完了です。ここで一日目の工程が終了。
工事2日日
二日目。床断熱施工面の上に床下地を施します。通常床下地に合板が用いられますが、今回既存の床面には合板とは別にフローリング材が施されていたため、高さ調整用に2枚重ねの下地を施します。
下地張りを終えすぐに床仕上げ工程。今回採用した床仕上げは車いすでも利用可能な衝撃吸収性と耐動荷重性を兼ねたノーワックス仕様の発泡ビニルシート材。床色はすまい手さんの希望で明るいグリーンの床板を採用。床仕上げ工程中一旦別の現場に向かっていましたが、再び現場へ戻ると既に床を張り終え完了していました。職人さんの段取りと丁寧な施工に感謝です。
床仕上げを終えるといよいよ新しい洗面カウンターの設置。ここからは設備屋さんの工程。納品されたすべての製品の品番が間違いないことを確認し、連携プレーで室内へと運ばれます。カウンター下部は車いす利用のため給排水配管は両脇に振り分けられてます。ここで二日目の工程が終了。
工事最終日
工程最終日。最終日のスタートは化粧鏡の取り付けから。化粧鏡は直接壁面設置になるため設置に先立ち壁支持材の高さやビス固定の位置確認を入念に行います。更に照明器具やコンセント配線の接続やつなぎ込みなど細かな確認が必要となり慎重に作業を進めます。
化粧鏡、サイドスイッチコンセントカバープレート、照明器具とようやく設置作業が整い据付が完了しました!。この時点で午前10時40分。照明器具も無事に灯りひとまずほっとしました。
据付完了後、住まい手さまの協力を頂いて車いすをカウンターに添えて状況を確認します。実際に車いすをカウンターに寄せてみると。。。バッチリ!!カウンターとの高さのバランス、奥行き方法への使用感。やはり製品化されるまで検討に検討を重ねられただけのフィット感や安心感に納得しました。
一点だけ住まい手さまから指摘されたのが、排水口ポップアップ機能が設けられていなかったこと。。住まい手さまとしてはボウルに水を溜める思いもあった様子で、そこはカタログに掲載はなく、あるものだと思い込みをしていた部分。ただ車いす利用が前提でもありボウル深さは10センチしかなく通常の洗面ボウルのように深さを確保出来ない造りだとわかり、最終的にご納得いただけました。
予定した3日間の工程ですべての改修が完了しました。完了した脱衣室は新しい床の色の効果も加わり部屋の雰囲気も以前より明るくなりました。一点アドバイスを加えれば、オープン型の洗面台の場合は収納が少なく限られてしまうという側面があります。今回はカウンター袖に縦型のサイドキャビネットを新たに設置しましたが、カウンター周りは歯ブラシやドライヤーなど置き場が必要なことも確かです。車いす利用での洗面カウンター採用の場合、収納面も含めご参考ください。以上、洗面室改修のご報告です。