宮崎県児湯郡の建築設計事務所「とやま建築デザイン室」

宮崎県児湯郡にて住宅設計に関わるご提案を行っています。

断熱窓リフォーム 

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前回瓦屋根改修でお伝えした南高鍋の家では窓断熱リフォームも行いました。この記事では窓断熱改修に関心を持たれてる方へこの工事の事例を通じて断熱窓改修に至る経緯から窓の設置までの模様をお伝えします。

まず窓の改修を行うまでの話しのきっかけは、南高鍋の家で暮らす90歳のお母様とその娘さまからの相談で始まりました。相談の内容は冬場の夜トイレを利用する際に寝室から離れたトイレの場所まで歩行する際、廊下のあたりで室温が低く寒い思いをして非常に心配があるとのことでした。ご高齢でもあるお母様のためにも何かあったら心配というお気持ちから寒さを解消したいとのご相談をお預かりしました。

またトイレまでの空間だけでなく、現状で利用している洗面脱衣室や浴室も同様に寒さのためヒーターを常時点けたままにしているとのことで、調査のためにお住まいに伺うと廊下や洗面室に複数のヒーターが置かれている状況でした。

既存の廊下や洗面脱衣室には複数の暖房器具が置かれていました。

  断熱窓の提案へ



そこでデザイン室より窓の断熱へのお話しを持ちかけて既存窓の調査を行うことになりました。まずは現状の窓の確認ということでサッシメーカーの方と同行して現場で既存窓の調査を実施。調査では窓の寸法やガラスの種別の他、サッシ枠の状況など確認を行いながら記録。

調査からも窓は単板ガラスと言われる1枚板ガラスの窓であることがわかり、通風と採光の機能は今でも充分に得られているものの、断熱面での性能は熱の出入りが非常に大きく、今後の不安や悩みを解消すべく最新の断熱窓のご提案を行いました。

窓のリフォーム(断熱)については現在、各窓製造メーカーから様々な製品が窓の目的やデザインに応じて提供されています。今回その中から提案したのがYKK-AP社のかんたんマドリモという断熱リフォーム専用の窓。

こちらの窓は既存の壁を取り壊すことなく、既存の窓枠を利用しながら簡単に断熱窓へ取替えを行うことが出来る窓で、その工事も壁に取り付けられている窓枠を利用してリフォームをすることが出来ます。

他の窓メーカーも同様に現場での確認を行いましたが、今回この南高鍋の家でのリフォームに対応出来ると回答出来たのはYKK-AP社のかんたんマドリモのみということで、住まい手の娘さまにその経緯を伝え採用に至りました。


また窓ガラスの仕様についても合わせてご提案。

ガラスの提案については国が定める省エネルギー基準地域区分から、2枚構成の複層ガラスの中で複数選択出来る可能性はありました。しかし複層ガラスでも改善はするものの、今回は脱衣場も含めての相談のため選択の判断は慎重になりました。

また現在90歳になるお母様のことと介護で支えている娘さんの辛労も考えると、より寒さや冷え込みから起きる心身への負担を掛けないワンランク上の断熱窓が安心につながるのではと思いました。そうしたことを考えながら今回はワンランク上の断熱窓が良いと判断し3枚構成の真空トリプルガラスの仕様を提案し採用に至りました。

ちなみに窓から逃げる熱量をドライヤー1台の熱量で換算すると...
・アルミフレーム+単板ガラスの時の窓から逃げる熱量 約3,125W(約1000Wのドライヤー3台分)
・樹脂フレーム+真空トリプルガラスの時の窓から逃げる熱量 約475W(約1000wドライヤーの約半分の熱量)という具合です。(※算定根拠 窓面積30㎡ 外気温4℃ 室温20℃での試算)この窓ガラスで既存の1枚板ガラスの6.5倍以上の断熱性能が改善されることになります。

今回断熱窓へのリフォームを行うのは1階廊下に通じる階段上の窓の他、洗面脱衣室や浴室を含め計5ヶ所の窓。そのどれもが旧来からの単板ガラスのアルミ窓です。

洗面脱衣室の窓

浴室の窓

2階廊下の窓

2階洋室の窓 南

2階洋室の窓 北

旧来の窓ガラスは室内にひかりを取り込むために生まれたもので、ガラスを介してひかりが室内に入れ込むことで目的や役割は果たされていました。

また家全体に隙間があったことで部分的に一部が寒いということがあったわけでなかったため窓自体が寒いという認識まで至らなかったことが考えられます。70年世代の私でも幼少期窓が寒いなんて思うことはありませんでしたので。。。時代の変化と進化を肌身で感じます。

 工事も早く簡単に

ここからが断熱窓の改修工事の様子です。


先にお伝えした様にマドリモ(改修専用の窓)についての一番の特徴は既存の窓枠を利用しながら工事が可能という点です。改修工事では何かと取り合う部分同士の工事が発生しやすいもので、見積りや工期にも影響が出ることもあります。マドリモの場合必要以上に周辺の壁を壊したりする必要がないためスピーディーに作業が進みます。職人の方も要領を掴んでいるため無駄な動作なくテキパキと進めます。

断熱窓の取り付けが終わり取り周辺への気密材を施している様子。
2階の窓は既存雨戸袋までの取り替えのため屋根上に昇って外部からの作業。

既存の窓枠に新しい窓枠を被せた後、室内からガラス窓の取り付けを行っている様子。窓のガタツキが起きないよう目視でフレームを確認しながら慎重に作業を進めます。

 断熱窓設置完了

全ての工事が終わり断熱窓が設置されました。わかりやすく改修前と改修後の写真を並べてみます。
脱衣室 ビフォー

脱衣室 アフター

浴室 ビフォー

浴室 アフター

2階 廊下 ビフォー2階 廊下 アフター


2階洋室南 ビフォー(上)・アフター(下)


2階洋室北面 ビフォー(上)・アフター(下)

 


ということで、ここまで断熱改修に至る経緯から実際に取り替えを行った改修の様子をお伝えしました。

既存窓の取り外しから新しい窓に変え終わるまでの所要時間は窓の枚数にもよりますが、概ね3時間前後。実際取り替えを行ったこの日は5ヶ所の窓をその日のうちに取替えまで設置完了しました。

改修後(3月中旬)、窓の寒さ改善効果についてすまい手の方にお尋ねしてみると窓からの冷気が感じられないとのお言葉で改善効果が感じられたご感想を頂きました。どれくらい寒さが改修の前と後で変化したしたのか、引き続きサーモカメラでのテスト解析を行い機会をみてお伝えしたいと思います。

文責:外山秋人(とやま建築デザイン室)